Pico Technologyのクランプ式電流プローブTA018を使っている。DC/AC対応で、1Aが100mVの電圧に変換されて出てくるというもの。テスターにつないでもいいが、オシロスコープにつないで瞬時電流計として使うことが多い。
写真は、抵抗を変えて、TA018が示す電流値を測っているところ。試した直流0~1Aの範囲では、有効数値2桁で使うなら補正不要の直線性があると確認できた。
電流を測定するとき、回路を切ってシャント抵抗を挿入する方法がある。この方法は回路に介入するので、電圧・電流が本来のものとズレやすいことと、回路を切り離す手間がかかるのが欠点。一方で、純抵抗なら動作遅れ(スキュー)、波形の狂い(歪み)、周波数特性についての配慮が(あまり)いらない利点がある。
クランプ式だと、利点・欠点がシャント抵抗法の逆になる。回路の外側から測るので、電圧・電流に与える影響を無視できる(ことが多い)。しかし、電流計そのものが電子回路なので、立ち上がりの遅れと、計測値が狂う(誤差や非直線性)、動作可能な周波数に配慮が必要である。とくにオシロスコープで瞬時電流計として使うときは、これらを常に意識する必要がある。
TA018は低価格品ゆえ、説明書に書いてあるのは「対応周波数20kHz」だけで、他は不明である。ならば測ってみよう。
電圧計測なら、鋭く立ち上がる方形波はPicoscopeのFG(信号発生機能)で作ればよい。が、今回は電流計測なので1A程度の電流をドライブできる回路が必要である。そこで、タクトSW→RCでチャタリング防止→シュミットトリガ→nMOSFETという典型的な回路を採用。クランプ電流計とシャント抵抗の両方で測ってみる。
ブレッドボードに組んだところ。写真には写っていないが、電圧プローブで電圧も測定する。容量切れ間近の単四電池で給電したので、無負荷8本で9.6V程度である。
青が電圧、赤がクランプ電流計の波形である。SWオンと同時に電圧が低下するが、電流の測定値が上がり始めるまでに遅延が502ナノ秒ある。これがTA018の遅延時間と考えられる(オシロスコープのA/Bチャンネル間スキューは、以前に650ピコ秒と測定済みなので無視できる)。
電流測定値が安定するまで8.8マイクロ秒かかっている(立ち上がり時間は4マイクロ秒)。この数値は、①方形波の立ち上がり時間、②測定に使った回路+電池による影響、③TA018が測定に要する時間が絡み合っているのだろう。
シャント抵抗で電流を測った場合は、電圧と電流の安定するまでの時間は1マイクロ秒以下である。①方形波の立ち上がり時間、②測定に使った回路+電池による影響は少なく、ほとんどは③TA018が測定に要する時間と判明した。今回の実験はこれにて終了。