フェライトコアの高周波電流阻止量の測定【結果編】

装置製作編のやり方でフェライトコアの阻止量を測ってみた。

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対象のフェライトコアは、一般向けにエレコムが売っているもの2種類。フェライトコア小は1回巻と3回巻、フェライトコア大は3回巻の3通りで測定した。

 

 

 

 

 

 

 

 

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フェライトコア小・1回巻。青が入力、赤がフェライトコア通過後の値。Picoscopeの2chの測定結果を、このやり方で重ね合わせて表示している(以下同様)。10dB程度の減衰。

 

 

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フェライトコア小・3回巻。20dB強の減衰

 

 

 

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フェライトコア大・3回巻。20~25dBの減衰

 

 

 

 

意外と全帯域でまんべんなく減衰することがわかった。小・1回巻でも10dB程度の減衰量を得られるというのは安上がりでよい。一方、数MHz以下では効きが悪くなることもわかった。

Picoscopeの複数ch重ね合わせ表示の改善

Picoscopeは、そこそこの機能を備えているが、安い分、使い方の工夫も必要になる。当局が使っているのはPicoscope 3206Aで、Windows PCでPicoscope 6ソフトウェアで操作している。

今回は、オシロやスペアナで複数チャンネルの観測結果を見やすく重ね合わせる方法を試行錯誤した。

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スペアナ機能で2chを重ね合わせ表示にしたのが左である。Picoscopeでは、表示色を変更する機能はあるが、残念なことに透明度を変える機能がないので、どの色に設定しても下の測定結果の細部は見極めにくいままである。

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そこで、各チャンネルごとに画面キャプチャしてから、画像編集ソフトで重ね合わせることにした。これなら、ひと目で見分けられるようになった。

 

 

 

 

手順は次のとおり。

① Picoscopeで、複数チャンネルを重ね合わせ表示で観測する。縦軸は、すべてのチャンネルで同じスケールにしておく
② Picoscopeのキャプチャを停止
③ Picoscopeでひとつのチャンネルだけを表示して、PCで画面キャプチャする。同じ手順で各チャンネルを画面キャプチャする
④ PCで画像編集ソフトを起動。レイヤー機能があり、透明度を調整できるものなら何でもよい(当局はPaintShopProを使っている)
⑤ ひとつのチャンネルの画面キャプチャを開き、その上に別チャンネルの画面キャプチャを別レイヤで重ねる。重ねたレイヤの透明度を上げる。ブレンドモードを変えて、いちばん見やすいものを選ぶ。PaintShopProでは、不透明度60%、ブレンドモード=標準でOK

なお、軸やメニューバーなどの色味が変わるのが嫌なら、マスクをかけるなどの配慮をすれば変わらないようにできる。

フェライトコアの高周波電流阻止量の測定【装置製作編】

予備実験編で、フェラライトコアの前後の高周波レベルをスペアナで測ることで、フェライトコアの周波数ごとの阻止量を視覚的に表示できると判明した。

結論としては、ArduinoのプログラムでDDSの発振周波数を変化(スイープ)させる方法で、0.5~60MHzまでの高周波を得ることにした。スイープ幅は、AMラジオ~HF~50MHz帯を想定している。

広帯域な高周波の発生方法としては、(1-1)ツェナーダイオードなどで広帯域ノイズを一気に発生、(1-2)弛張発振器で広帯域ノイズを一気に発生、(2)単一周波数を高速にスイープさせる、の3通りを検討した。

当局のスペアナはPicoscopeであり、オシロのオマケ機能なので感度が悪く、フロアノイズも大きい。(1-1)と(1-2)を試したものの、ゲインの大きな広帯域アンプを付けないとまともに測れないので却下。残った(2)でやることにした。

DDSはサインスマートAD9851モジュール(秋月電子で3500円)を、マイコンはArduino Nano(秋月電子で2780円)を採用した。

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このように測定機器を配置した。USBケーブル経由のPCノイズを避けるために、Arduinoは電池で駆動する。高周波は、DDS出力→インピーダンス整合抵抗50Ω(ここでは47Ωを使用)→入力測定プローブ(A)→フェライトコア→出力測定プローブ(B)→終端抵抗50Ωと流れるようにした。

 

Arduinoのプログラムは、0.5~60MHzまで10kHz飛びにスイープするようにDDSを制御した。といってもfor文がひとつだけの単純なものである(下記)。

 

 

// 0.5~60MHzまで10kHz飛びにスキャン繰り返し
// 繰り返し時にLEDオン/オフトグルで死活表示
// #includeは、秋月サイト提供→ http://akizukidenshi.com/catalog/g/gM-09945/
// (C)2016 SUSHI/JJ0PPM
// 2016/2/22 作成
#include <EF_AD9850.h>
//BitData - D8, CLK - D9, FQUP - D10, REST - D11
EF_AD9850 AD9850(9, 10, 11, 8);
char ledonoff = LOW;
void setup() {
  AD9850.init();
  AD9850.reset();
}
void loop() {
  long i;
  double f;
  ledonoff = ~ledonoff;
  digitalWrite(13, ledonoff);
 
  for(i=50; i<=6000; i++){
    f=(double)i*10000;
    AD9850.wr_serial(0x01, f);
  }
}

フェライトコアの高周波電流阻止量の測定【予備実験編】

以前にパッチンコア(フェライトコア)の効き具合をアンテナアナライザで測ろうとしたが怪しい結果になった(これこれ)。いま思えば、考えもなしに進めたので、うまくいかなくて当然だった。今回は検索して先人のやり方を勉強して、(a)FGで高周波を生成→(b)フェライトコア→(c)50Ωダミーロードとして、(a)点と(c)点の電圧をオシロ/スペアナで測ることにした。まずは予備実験に取り掛かった。

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測定の全体像。PicoscopeのFG機能で高周波を生成する。Bchで生成電圧(a)を測定、Achでフェライトコア通過後の電圧(c)を測る。

 

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30MHzまでをスペアナ表示したもの。赤と青の差が阻止量を表している。この方法ならフェライトコアの阻止量を定量的に測れそうである。

当局のPicoscopeのFGで生成できるのは1MHzまでなので、方形波を選択して高調波成分を増やした。しかし20MHzほどで高調波がフロアノイズにまぎれてしまう。本番の測定時には、より広帯域なFGを用意する必要があることも判明した。

ツェナーダイオードのRFノイズ電圧と帯域を測定

HFからVHF帯のノイズ源に興味がわいて、ジャンク箱にあった古いツェナーダイオードのノイズ電圧と帯域を測ってみた。

結論的には、先人が雑誌やネットで発表している通り、(1)8Vより高い電圧のもの、(2)推奨電流より大幅に少ない電流 のツェナーダイオードのノイズ発生量が多かった。

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測定方法は、左の写真のとおり。単四×11本だが、古電池なので13V程度である。ツェナーダイオードの一端にオシロ/スペアナをつないでいる。

ノイズが多かったのは、RD4AとRD13A。少なかったのは、RD9B、1S1718、1S2191だった。1 3

 

 

RD4Aのノイズ電圧。0V点の調整を忘れた(以下同様)。
ツェナー電圧 11.6V、電流47μAで、200mV以上のノイズ出力が得られた。

 

 

 

 

 

 

RD4Aのノイズ帯域。100MHz程度までノイズが出ている。

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RD13Aのノイズ電圧。ツェナー電圧 11.1V、電流約50μAで、100mV程度のノイズ出力が得られた。

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RD13Aのノイズ帯域。200MHz弱までノイズが出ている。

RD4AとRD13Aではノイズの出方が違う。RD4Aはノイズ電圧は高いが発生帯域は狭い。RD13Aはノイズ電圧は低めだが発生帯域が広い。これは、RD13Aの方が鋭い立ち上がり・立ち下がりのパルスが出ているということなのだろうか? ノイズ源として、どちらの特性が向いているのかは試してみないとわからない。RD4Aのツェナー電圧は、仕様では4.0Vのはずだが、測定値が11.6Vだった点は不審である。これらは要検討だが、今回はここまで。

 

TA018電流プローブの遅延と立ち上がり特性

 

Pico Technologyのクランプ式電流プローブTA018を使っている。DC/AC対応で、1Aが100mVの電圧に変換されて出てくるというもの。テスターにつないでもいいが、オシロスコープにつないで瞬時電流計として使うことが多い。

Pico Technology TA018

 

写真は、抵抗を変えて、TA018が示す電流値を測っているところ。試した直流0~1Aの範囲では、有効数値2桁で使うなら補正不要の直線性があると確認できた。

電流を測定するとき、回路を切ってシャント抵抗を挿入する方法がある。この方法は回路に介入するので、電圧・電流が本来のものとズレやすいことと、回路を切り離す手間がかかるのが欠点。一方で、純抵抗なら動作遅れ(スキュー)、波形の狂い(歪み)、周波数特性についての配慮が(あまり)いらない利点がある。

クランプ式だと、利点・欠点がシャント抵抗法の逆になる。回路の外側から測るので、電圧・電流に与える影響を無視できる(ことが多い)。しかし、電流計そのものが電子回路なので、立ち上がりの遅れと、計測値が狂う(誤差や非直線性)、動作可能な周波数に配慮が必要である。とくにオシロスコープで瞬時電流計として使うときは、これらを常に意識する必要がある。
TA018は低価格品ゆえ、説明書に書いてあるのは「対応周波数20kHz」だけで、他は不明である。ならば測ってみよう。

回路図電圧計測なら、鋭く立ち上がる方形波はPicoscopeのFG(信号発生機能)で作ればよい。が、今回は電流計測なので1A程度の電流をドライブできる回路が必要である。そこで、タクトSW→RCでチャタリング防止→シュミットトリガ→nMOSFETという典型的な回路を採用。クランプ電流計とシャント抵抗の両方で測ってみる。

大電流方形波発生器

 

ブレッドボードに組んだところ。写真には写っていないが、電圧プローブで電圧も測定する。容量切れ間近の単四電池で給電したので、無負荷8本で9.6V程度である。

 

TA018-delay

 

青が電圧、赤がクランプ電流計の波形である。SWオンと同時に電圧が低下するが、電流の測定値が上がり始めるまでに遅延が502ナノ秒ある。これがTA018の遅延時間と考えられる(オシロスコープのA/Bチャンネル間スキューは、以前に650ピコ秒と測定済みなので無視できる)。

TA018立ち上がり時間

 

 

 

電流測定値が安定するまで8.8マイクロ秒かかっている(立ち上がり時間は4マイクロ秒)。この数値は、①方形波の立ち上がり時間、②測定に使った回路+電池による影響、③TA018が測定に要する時間が絡み合っているのだろう。

電圧とシャント抵抗電流同時ローパスなし

 

 

 

シャント抵抗で電流を測った場合は、電圧と電流の安定するまでの時間は1マイクロ秒以下である。①方形波の立ち上がり時間、②測定に使った回路+電池による影響は少なく、ほとんどは③TA018が測定に要する時間と判明した。今回の実験はこれにて終了。

大地導電率測定・・・リベンジ編

大地の導電率の測定をやり直した。前回の失敗の原因を下記のように推定した←結果的には、推定は誤りだった(後述)。

原因1・・・発生電圧が不足して大地に流す電流が足りなくて測れない
対策・・・100V→240Vのステップアップトランスでより高い電圧を確保する

原因2・・・電流計で測れる最少電流の値が不足していて測れない
対策・・・μAまで測れるテスターを確保する

写真が100V→240Vのステップアップトランス。いまや高電圧を発生させるトランスは、真空管用のものは本格的過ぎて高価であった。旅行用のステップアップトランスの方が安かったので日章工業 MF-50EX を購入した。ヨドバシネット通販で3024円。

電流計として使うテスターは、秋月電子で売っているMASTECH MS8221Cを購入。2000円と超安かったが、外観の質感がたいしたことなく、LCDの透明カバーに擦り傷があった。値段相当というところか。手持ちテスターと電圧や抵抗の測定値を比較したところ、測定値は問題なかった。

発電機(AC100V)→レオスタット(0~130V調整可)→ステップアップトランス(100→240V昇圧)で発生させた電圧をAD間にかける。記録するのは、AD間に流れた電流値と、AB間、AC間の電圧である。

 

 

 

 

測定値 計算値
AD間電流(mA) 電圧(V) 接地抵抗(Ω) 大地抵抗率
ρ(Ωm)
大地導電率
σ(Ω-1m-1)
17.2 AC間 25.0 1453 1460 6.85e-4
17.1 AB間 24.4 1427 1433 6.98e-4
70.8 AB間 101.4 1432 1438 6.95e-4

接地抵抗=測定電圧/測定電流

逆算法による大地抵抗率
ρ=2πlR/ln(4l/d) R:接地抵抗 l:電極長=0.95m d:電極直径=0.01m

大地導電率σ=1/大地抵抗率

接地抵抗と抵抗率/導電率は予想の範囲内である。(1)大地の含水率、凍結度の違いでどうなるか?、(2)接地棒1本で接地抵抗が約1.4kΩだが、4本打ち込んだ接地棒を並列にしたとき何Ωになるのかに興味がある。

ここまでやって、AD間電流が17mAなら、前回の測定の際に測れていなければおかしいことに気が付いた。調べてみたところ、電流計として使ったテスターが壊れてた!!のであった。詳しくは失敗編の追記を参照。

PicoScopeプローブのキャリブレーション

PicoScope3206Aを昨年末に購入して快適に使っている。購入当初、プローブのキャリブレーション信号が出る端子が付いていないので外部信号源を用意する必要があると思っていた。が、遅まきながら、そんな必要はないことを知った。

PicoScopeの多くの機種がファンクションジェネレータ(FG)やAWG機能を持っている。そうした機種なら、FG/AWG信号を使ってプローブのキャリブレーションができる。このことは以前のマニュアル類に書いてなく、Pico Technology社のFAQでも外部信号源を使う方法を説明していた。

しかし最新のUser’s Manual /User’s Guideには”Compensating probes”の項目で、GEN端子(FG/AWGの出力端子)を使う詳しい手順を紹介している。新しい資料を探していて気が付いた次第である。新しいマニュアルはここにある。

 

プローブ較正の設定/手順は、(1)PicoScopeのFGウィンドウで、方形波、1kHz、P-P1.8Vに設定。(2)プローブをGEN端子につなぐ。(3)オシロウィンドウで、ACカップリング、2~3サイクルが大きく表示されるようにx-y軸を調整。(4)プローブのトリマーを回して調整、という流れがマニュアルに書いてある。

さっそくやってみた。写真は、GEN端子でプローブを較正しているところ。そう頻繁にやる作業ではないが、PicoScopeが一段と快適になった。

 

大地導電率測定・・・失敗

避雷用の接地棒を打ち込むついでに大地導電率(と接地抵抗)を測定しようと考えた。敷地は傾斜地で、30~50cmほどの腐葉土の下は火山灰や軽石という、かなり水はけのよい土壌である。導電率が低い=接地抵抗が高いと考えられるので、まずは直径1cm・長さ1mの銅の接地棒を4本打ち込んで様子をみることにした。

左図が接地棒の配置である。接地時には4本を並列につないで使うが、その前に導電率を測ろうとした。測定方法は3極法。具体的には、A-D棒間に交流電流を流し、A-B棒間の交流電圧を測ると導電率(接地抵抗)が計算できるはず。

交流電流は発電機をレオスタットに通して、0~130Vに調整できるようにした。交流電流計と交流電圧計はテスターである。

しかし失敗だった。電流計に値が出るほどには電流が流れないのである。大地の抵抗が大きすぎるので、もっと高電圧を発生させないと無理なのであろう。

レオスタットを回してA-D棒間にかける電圧を上げるにつれて、A-B棒間の電圧は0.05Vまで上がったが、発電機に挿したコンセントを抜いても同じ電圧が表示された。何らかの回り込みと考えられる。

2012/11/9 追記

測定リベンジでは、このテスターで測れるはずの電流値が得られた。ということは、このテスターに問題があり測定がうまくいかなかったことになる。テスターの回路図を見たところ、電流計200mAレンジでは250V 500mAのヒューズを経由しており、実際にこのヒューズが切れていた。ヒューズのガラス管内に小さな金属塊があることから、流した電流により切れたのは間違いない。この計測時に切れたのか、それ以前から切れていたのかは不明である。

なんちゃってレーザ水準器の製作

我が家のV字ダイポールアンテナは、2本の大木を使って張っている。傾斜地なのに基準となる水平線を引かずにアンテナを張ったので、アンテナが微妙に傾いたのが前回の反省点である。次のアンテナはきっちり水平に張りたいものだ。

精度は、10mの距離を誤差1cm程度で水平を出せれば十分。ペットボトル水盛りほどの精度はいらないということである。そこで、いずれも手持ちの100円ショップの水準器と2000円レーザーポインタを使ってレーザ水準器を作った。作ったといっても、2つを両面テープで三脚に貼り付けただけ。

室内(水平面と確認できている場所)の数m離れた2点、A→Bで水平を出したらB→Aで水平を取り直せば照準のズレを調べられる。ズレに合わせて、水準器かレーザポインタかの前後の両面テープを張り増して(傾きを変えて)、またA→B、B→Aの計測を繰り返してゼロインすれば調整完了。実地でも2点間を往復して水平を取れば間違いない。

 

 

 

上から見たところ。

ゼロ円にしては精度が高い。ただし、このレーザ水準器は、点しか出ないのでどこにあたっているかわかりずらい。レーザが弱いので、10mも離れると真昼間はまったく見えないから、夕方から夜用である。